自社商品が作れない町工場に、未来はないのか?|製造業アトツギの新しい選択肢

自社商品を作りましょう。
付加価値をつけましょう。
製造業アトツギ向けの文脈では、
そんな言葉が当たり前のように語られます。
でも、ずっと違和感がありました。
自社商品が作れない町工場は、どうすればいいのか。
そして、そういった町工場こそが日本のものづくりを支えており、圧倒的に多いではないか。
この記事は、
受託加工の町工場を承継予定の私自身が、
自社商品開発とは違う道を選び、
SSKグローバルという会社を立ち上げた理由を
赤裸々に書いたものです。
自社商品が作れない町工場に、未来はないのか?
自社商品開発ができない町工場は、どうすればいいのか
自社商品を持つ。
自社ブランドを作る。
それができれば、確かに強い。
でも、すべての町工場が
その道を選べるわけではありません。
特に、受託加工を主とする町工場では、
- エンドユーザーとの直接接点がない
- ニーズの一次情報が手に入らない
- 技術はあるが、言語化が難しい
- 他業界転換には設備も知見も足りない
という壁が、常に立ちはだかります。
これは努力不足ではなく、構造の問題です。
家業・芝三工業所の話|技術はあるが商品が作れない現実
私は、
真空成形によるトレーを製造する町工場
芝三工業所の後継です。
祖父が創業し、父の代で事業は転換しました。
大量生産ではなく、
小ロット・高難度・加工が難しいトレーに特化。
形状が複雑。
抜きが厳しい。
要求が細かい。
そんな案件を、一つずつ形にしてきました。
結果として、
「難しい案件があれば、芝三に相談すれば何とかなる」
そう言っていただけるようになりました。
これは間違いなく、家業の強みです。

なぜ受託加工の町工場では自社商品が難しいのか
一方で、冷静に考えると、
- トレーは顧客製品の“脇役”
- エンドユーザーの声は直接届かない
- 技術は案件ごとに最適化され、再利用しづらい
自社商品を作ろうとしても、
「何を」「誰に」「いくらで」売るのか
その前提が、そもそも掴めない。
放置された顧客資産金型の再利用サービスのご提案なども実施してみましたが、
家業の支える第二の柱までは程遠い現状です。
自社商品開発だけが、製造業アトツギの正解なのか
ここで、ずっと抱えていた違和感があります。
自社商品を作れる会社は、正直、放っておいても生き残る。
問題はそこではありません。
日本の製造業を支えてきたのは、
自社商品を持たない受託加工の町工場です。
工作機械
産業機械
精密機械
半導体製造装置
それらの裏側には、
無数の町工場の技術があります。
その町工場の後継者が、
「将来が描けない」
「継いでも先が見えない」
という理由で、廃業を選ぶ。
それは、日本のものづくりにとって
本当に健全な未来なのでしょうか。
町工場の後継者不足が、日本のものづくりを弱くしている
父が、工場でぽつっと言ったことがあります。
「部品が海外生産になったら、
うちのトレーは使われなくなるな」
トレーは、物を運ぶ器です。
中身が海外に行けば、器も不要になる。
この一言で、すべてが繋がりました。
これは一社の問題ではない。
構造の問題だと、初めて腹の底から理解しました。
海外で見た現実|ベトナム製造業の勢いと熱量
家業に戻る前、
私はベトナムで金属加工の取引立ち上げを経験しました。
設備の数。
若さ。
スピード。
正直、勢いは想像以上でした。
しかし一番圧倒されたのは、熱量です。
品質管理の勉強会を行った際、
現地メンバーから次々と意見が出る。
改善提案を出すと、
「まずはやってみよう」
と、即行動に移る。
一方で、
- なぜその工程が必要なのか
- なぜその検査が重要なのか
といった背景理解は、まだ十分ではありませんでした。
そこで気づきました。
海外には勢いがある。
日本には技術がある。
でも、両者はまだ噛み合っていない。
いきなり海外工場は作れなかった理由
私はJETROからあまり相手にしていただけなかったので、
自力でベトナムで市場調査を実施しました。

コスト計算も行い、協力会社も見つかり、
市場で勝負をできる目処は立ちましたが、サプライヤー切り替えのハードルが高かった。
仕事がない状態でラインを持つのは、
リスクが大きすぎる。
そこで考えたのが、
まずは“部品側”から海外と関わることでした。
SSKグローバルという選択|海外調達を「できる」に変える技術商社
こうして立ち上げたのが、
SSKグローバル株式会社です。
芝三工業所の100%子会社として設立しました。
SSKグローバルは、
単なる商社ではありません。
海外調達の「できない」を「できる」に変える技術商社です。
- 加工技術
- 品質管理
- 現場感覚
これを理解できる人間が、
海外との間に立つ。
設立から1年で、
産業機械・工作機械・精密機械分野を中心に
取引規模は1億円を超えました。
技術提携という次のステップ|できない加工をできるに変える
次のステップは、
ハイレベルな加工技術を武器にした技術提携です。
ベトナムの協力会社と組み、
これまで「できない」と断ってきた案件を
「できる」に変える。
すでに1社とは技術提携を合意し、
新しい案件に取り組んでいます。
自社商品がなくても、町工場は次世代につながる
このモデルが形になれば、
日本の町工場アトツギにも広げていきたい。
- SSKを通した海外受発注
- 実案件での技術支援
- JV化という選択肢
- 人材育成と人材の循環
海外を「外注先」ではなく、
自社の機能として持つ。
そんな継ぎ方も、あっていいはずです。
家業が物を運ぶ器なら、SSKグローバルは技術を運ぶ器
このビジネスが伸びるほど、
家業である芝三工業所のトレー需要も生まれます。
部品だけでなく、
梱包まで含めたトータルソリューション。
家業が物を運ぶ器を作る会社なら、
SSKグローバルは
日本の技術を世界へ運ぶ器です。
おわりに|この違和感を持つ人と話したい
自社商品が作れなくても、
町工場には未来がある。
私はそう信じています。
もし、
- 同じ違和感を持っている方
- 継ぐか悩んでいる方
- 海外との関わり方を模索している方
がいれば、ぜひ一度話をしたい。
正解は一つじゃない。
でも、何もしなければ、何も変わらない。
SSKグローバルは、
その一歩を一緒に踏み出すための器でありたいと思っています。

